水島くん、好きな人はいますか。




「そういえば、京とも話した?」


塾が終わったあと、お母さんの体調を心配してくれたみくるちゃんに大丈夫と返せば、唐突に尋ねられた。


過労で、もう退院したってことは瞬伝手に聞いたんだろうけど……どうして水島くんが出てくるのか。


「えっと、なにを?」

「あれ? 聞いてない? お母さんが倒れた日、万代が早退したことに気付いたのって京だったんだよ」

「え!? き、聞いてないっ」

「うんとね。あの日、京は6限目サボってて、万代が事務員と駐車場に向かってるのを見かけたんだって。そういうことって普段ないでしょ? だから家族になんかあったんじゃないかって、京が瞬に伝えたの。それで、瞬が職員室に訊きに行ったんだよ」

「そうだったの……?」

「うん。瞬がさ、血相変えて『帰る!』って戻ってきたから、そんなに悪いことがあったの!?って訊くじゃん。そしたら瞬が『万代の母親が倒れたんだ』って」


全く知らなかった。てっきり瞬が病院まで来てくれたのは、先生から聞いたんだとばかり。


水島くんが気付いていなかったら、瞬が来ることはなかったのかも。


「そのときは倒れたらしいってことしかわかんなかったんだけど、その日の内に瞬が心配ないって教えてくれてほっとした。大事に至らなくてよかったね」


頷けば、みくるちゃんはにこりと笑ってくれる。


「みんなが知ってるとは思わなくて。黙っててごめんね」

「いやいや、謝ることないよ。ていうかあたしは、万代も元気になってくれてよかったーって感じだしね」


……それって、元気ないように見えていたってこと?
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