水島くん、好きな人はいますか。
◇
「そういえば、京とも話した?」
塾が終わったあと、お母さんの体調を心配してくれたみくるちゃんに大丈夫と返せば、唐突に尋ねられた。
過労で、もう退院したってことは瞬伝手に聞いたんだろうけど……どうして水島くんが出てくるのか。
「えっと、なにを?」
「あれ? 聞いてない? お母さんが倒れた日、万代が早退したことに気付いたのって京だったんだよ」
「え!? き、聞いてないっ」
「うんとね。あの日、京は6限目サボってて、万代が事務員と駐車場に向かってるのを見かけたんだって。そういうことって普段ないでしょ? だから家族になんかあったんじゃないかって、京が瞬に伝えたの。それで、瞬が職員室に訊きに行ったんだよ」
「そうだったの……?」
「うん。瞬がさ、血相変えて『帰る!』って戻ってきたから、そんなに悪いことがあったの!?って訊くじゃん。そしたら瞬が『万代の母親が倒れたんだ』って」
全く知らなかった。てっきり瞬が病院まで来てくれたのは、先生から聞いたんだとばかり。
水島くんが気付いていなかったら、瞬が来ることはなかったのかも。
「そのときは倒れたらしいってことしかわかんなかったんだけど、その日の内に瞬が心配ないって教えてくれてほっとした。大事に至らなくてよかったね」
頷けば、みくるちゃんはにこりと笑ってくれる。
「みんなが知ってるとは思わなくて。黙っててごめんね」
「いやいや、謝ることないよ。ていうかあたしは、万代も元気になってくれてよかったーって感じだしね」
……それって、元気ないように見えていたってこと?