水島くん、好きな人はいますか。
「よしっ! わかった万代! 遊びに行こう!」
「……へ?」
とにかく勉強だ!と頭を切り替えたばかりなのに、みくるちゃんの言葉を甘い蜜のように感じてしまう。
「今から遊ぶのっ! 瞬たちも呼んでさ、近場でいいからどっか行こうよ。やっぱ息抜きも必要だよね~」
鼻歌交じりに携帯を取り出したみくるちゃんに同意する。
いやいや、だめだってば。こうやってすぐ息抜きと称して怠けるから、A判定に届かないんだってば!
「もしもし瞬? 今からちょっとだけ遊びに行かない?」
ご機嫌なみくるちゃんの誘いに瞬のOKが出るまで約4分弱。気付けばゆるみきった笑顔を浮かべていた。
うん、息抜きって大事だよね?
「はい、ハカセと万代の負けーっ!」
18時前のゲームセンターに実況役をしていた水島くんの声が響く。
目の前で、エアホッケーの対戦相手だったみくるちゃんと瞬がハイタッチをする。悔しい。
「負けちゃったね」
「ハカセが指示ばっかり出して動かないからですよっ」
「僕、見た目を裏切らないインドアっぷりだったでしょ」
このコンビで勝てるわけがなかった。
肩を落とせば瞬が上機嫌な声音で言う。
「次のゲームはお前らが金出すんだぞ。惨敗したからな」
くっ……今のところ負け知らずだからって……!