水島くん、好きな人はいますか。

「水島くんも息抜きになった?」

「なったなった! ほんっと、みんな見ちょるだけで――」


ふっと水島くんから笑顔が消えたように見えたのは、瞬く間の出来事だった。


見間違いかと視線を据えれば、


「楽しすぎるけん」


と、水島くんは微笑んでいたのに胸がざわつきを覚える。


今……言い換えた? 気のせい、かな。


前に元気のない水島くんを見ちゃったから、レーダーのように探知しようとしているだけかも。



「ねーっ! 帰る前にプリクラ撮ろうよ!」

「もちろん瞬さまのおごりだそうで」


みくるちゃんとハカセに目を向ける。すると、仏頂面の瞬が仁王立ちでわたしと水島くんを凝視していた。


「おら、崇めろ。手を合わせ、ひれ伏せ」

「負けちょーくせに偉そうにすんなや」

「っだと京! その顔に落書きしまくってやるかんな!?」


それだけは絶対に阻止しようと心に決め、プリクラを撮りに行く。


5人で撮るなんて初めてだから緊張するな、とか。りっちゃんにあげたら大喜びしそうだな、とか。いろいろ考えているうちに撮り終え、みくるちゃんとふたりで落書きをした。


わたしはみんなのポーズに合わせて『選抜受かりますように』とか『瞬はじめての大敗』なんて書いたけれど、みくるちゃんが書いた『息抜きデート』『仲良し5人組』という言葉に、じんときた。


だからわたしは勇気を出して『高等部では同じクラスになりたいね』なんて、つい書いてしまったんだ。
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