水島くん、好きな人はいますか。
「最終仮定模試で、A判定獲りますっ」
電車通のみくるちゃんとハカセを見送るというのは、まだ帰りたくないという気持ちを隠すのに最適だった。
遠目に何本目かの電車を見送ってすぐ、みんなの意表をついたわたしに視線が集まる。
「いきなりなんだよ。万代ごときが夢見てんじゃねえ」
「ははっ! なんかやそれ。決意表明?」
「今年オールB判定だったマヨマヨがねえ」
「いけるよ! 万代ここ最近のぼり調子だもんっ」
「み、みくるちゃんしか信じてくれない……」
身のほど知らずなS判定を目指すって言ってるわけじゃないんだから、ちょっとくらい応援してくれたって……。
口を尖らせたわたしの頭に、ふわりと知らない手が乗る。
「万代ならできるけん。頑張れ」
胸をひと突きされたように、どくっ、と速まり出した鼓動は痛みを伴う。
水島くんが軽くわたしの頭を叩いたからか、同じ目線で微笑まれたからか。どきどきする胸を無意識に抑えると、ハカセの人差し指がわたしの額を突いた。
「あんまり無茶はしちゃだめだよ」
ハカセ……いい人だ。水島くん同様、微笑んでくれる彼に照れくさくなる。
「あたしも頑張んなきゃー。負けないからね、万代!」
「たかが仮想模試だろ。本番で実力出しゃいいんだよ」
みくるちゃんに勝ったことは一度もないのに。てっきり怒るかと思われた瞬でさえ、皮肉めいた鼓舞をしてくれる。