水島くん、好きな人はいますか。
「へへ……ありがとう。わたし、頑張るねっ」
やっぱりみんなと選抜に受かりたい。
まずなによりも有言実行!
「――さて、ハカセ。てめえは一度俺と話し合おうか」
「え? 京じゃなくて? 僕は許されると思ってたよ」
「許すか! なんださっきのデコピンならぬデコツンは! やるなら頭を吹き飛ばす勢いでやれ! こうだ、こう!」
「ぎゃあ! あぶ、危ないなあっ……!」
わたしの顔面を目掛け、張り手の素振りをする瞬に水島くんが大笑する。みくるちゃんは呆れ顔でわたしを瞬から遠ざけてくれる。そんなふたりに挟まれているわたしは、ハカセに技をレクチャーする瞬に白い目を向けた。
水島くんどころかハカセにまで迷惑かけるなんて――…。
「ん? どうしちょー」
ぱっと顔を上げたわたしの目には水島くんと、改札口を通る大勢の人たちが映る。その向こうには、電車が到着するのを待っている人たち。
「あ、ううん。なんでもない」
そう言ってすぐに、また耳を衝くなにかが聞こえた。
なんだろう、なんか、言い争ってるような……。
「っちゅーか瞬。プロレス好きってわけでもないんに、どこでそういう技覚えちょーが」
「はあ? ほとんどお前にかけられて覚えたんだけど?」
「え?」
わたしと水島くんの声が重なる。そして互いに顔を見合わせた途端、水島くんは吹き出した。