水島くん、好きな人はいますか。
「そういや聞いたか?」
「なにを?」
「初詣だよ。みくるが合格祈願しに行こうって、」
「え、行きたいっ! 何日?」
「予定では3日。お前と京の都合訊いてから決めるって」
3日かー……おばあちゃんちには行かないことになってるし、他の日になっても行ける。
「わたしは3日でも大丈夫」
「なら京は不参加決定だな」
「またそんなこと言う……」
「つーか誘っても来ねえだろ。あいつも変だわ、最近」
「……、」
「京って誰だっけ。万代が言ってた白衣が似合う子?」
「それハカセだろ! 何回説明すりゃ覚えるんだよっ」
「あー。じゃあもうひとりの子か。水島くんだっけ? 誘っても来ないって、なんでまた」
「知らね。最近は用事あるとか勉強したいとか言ってっけど」
けど? じっと見つめても、瞬は思い返すようにキッチンのほうへ視線を投げる。
「たまに戻んだよ。転校してきたばっかのころに」
……転校してきたころの水島くんに、戻る?
「戻るっつーか、彷彿とさせるっつーか。嘘ついてるようには見えねえけど、なんっか取っ付きにくいんだよな」
言葉を探す瞬の視線の先で、思考の中で、見えているものがわたしにはわからない。だけど、水島くんが転校してきたばかりのころ、瞬がよく言っていたことは覚えている。
うさんくさい。信用できない。笑顔がべたーっと顔に張り付いていて、気色悪い。そんな風に言うのは瞬だけだったから、今の今まで忘れていた。