水島くん、好きな人はいますか。
ごろんと再び寝転んだ水島くんに、手持無沙汰になる。
携帯、確認しないのかな。きっと瞬たちからお疲れ会の連絡が入ってると思うんだけど。
行かなくて、いいのかな。
水島くんとの沈黙は苦手じゃないはずなのに、今日は胸がざわざわとうるさい。
「今回のテストは、ちゃんと本気出した?」
寝転ぶ水島くんは空を見つめ、やがて「出した」と言う。
「総合1位になっちゃるって思ったけん、見直しまでしちょーよ。今までで最高得点かも」
「……、」
「まあ1位になれるかはわからんけど」
吹き抜ける朔風に心まで縮こまるよう。
高所から見えるコンクリートの森を遠望し、風になびく髪を手で押さえつける。
常に3位内の水島くんが1位を獲りにいく理由は、なんだろう。
「なれるよ。水島くんなら」
なににでもなれる。なんだって手に入れられる。
わたしは水島くんに対してそんな風に思っていたけど、実際はそうじゃないって今は思える。
得ようとしなければ知識は身に付かない。解こうとしなければ問題の答えはわからない。
「水島くんはみんなが知らないところで、みんなが知っている以上に、頑張ってるんだと思う」
水島くんは天才じゃない。人並み以上に、ありとあらゆるものを吸収しようとしているように見える。
「だから、1位獲ったらお祝いするね」
微笑みかけると、寝転んでいたはずの水島くんが上半身を起こしていた。