水島くん、好きな人はいますか。
◇
テスト休みも含め、3週間ほどあった冬休みも残り5日。
クリスマスも元旦もあってないようなものだったけれど、今日1月3日だけは勉強から解放される。
「ひゃー。やっぱ合格祈願ばっかだねーっ」
湯島天神への参拝を終え絵馬殿に向かうと、合格祈願を願った絵馬がたくさん掲げられていた。
「学問の神様ってだけあるね」
「来年は絶対、学業関係なしに初詣に来たい」
みくるちゃんとハカセの会話を聞きながら、唯一絵馬を奉納しなかった水島くんを横から盗み見る。
休み中、何度かメールのやり取りはしていたものの、顔を見るのは屋上で会って以来。今日来ると聞いたのも、大晦日の午前中にかかってきた電話を取ったときだった。
「ねっ! やっぱお守り買ってから帰らない?」
「みくるちゃん、出店のご飯食べたいんじゃなかった?」
「賽銭箱に500円放ったから、我慢するんだって」
「お守り買ったら占めて2100円の出費だもん。安くておいしいご飯で我慢しなきゃ」
「じゃあお守りは僕が買ってあげるよ」
「まじで!? やったー! 行こうふたりともっ」
ハカセはみくるちゃんにやんや、やんやと言わせ、背中を押され歩いて行く。
「……水島くんは、お守り買うの?」
「んー。買う」
ぱっ、と自分の顔が明るくなったのがわかる。
もしかしたらお守りもいらないかもって心配しちゃった。