水島くん、好きな人はいますか。


「縁結びもあるんだ。へーっ。丸いのかわいくない?」

「僕は格言入りの学業成就鉛筆のほうが気になるよ」

「あははは! 似合うよ鉛筆っ。買えば?」


並ぶ授与品を見ながら、みくるちゃんとハカセは当初の目的を忘れがち。


学業成就に合格祈願のお守りは3種ある。わたしはスタンダードな形をしたお守りに決め、色で悩む。


「万代、どれにするか決めちょー?」

「うん。あれ。赤か白がいいけど……うーん。白かなあ」


赤も捨てがたいけど……。と口を尖らせていれば、水島くんが白いお守りをふたつ手に取った。


「これください」

「え!? どうして!?」


おろおろしているあいだに水島くんは会計を済ませたお守りを受け取り、授与所から離れてしまう。


「み、水島くんっ! お金、えっと、待ってね今……」


立ち止まった水島くんに続き足を止め、バッグの中を漁る。けれど視界に現れた白いお守りに、手を止めた。


「頑張ろーな。万代」

「……」


ここでお金を返すのは野暮なんだろう。わたしだって水島くんが1位を獲ったら、お祝いをすると言った。


でも、どうして、そんな風に言ってくれるの。どうしてこんなこと、してくれるの。


そっと伸ばした指先がお守りに触れる。水島くんが微笑む。


……おそろいになっちゃった。


手のひらに収まった小さな希望を握り締めると、じんわりと目の縁が熱くなった。


「へへ。ありがとう、水島くん」


頑張るね。一緒に、頑張ろうね。
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