水島くん、好きな人はいますか。
避けるどころか腰を屈めてくれた水島くんに、きゅっ、と胸が締め付けられる。
水島くんの両頬に手が触れた瞬間、黒い双眸に呑まれる錯覚に陥って、それらを振り払うために水島くんの両頬をつまんで、引っ張った。
きれいな顔が予想以上に崩れたのが衝撃的で、腰を折って吹き出したわたしの耳に音が戻ってくる。
「あはは! み、水島くん今、わざと白目剥こうとしたでしょ……っ!」
「万代だってわざと頬膨らませたじゃろ。リスにしか見えんかった」
もっかいやって見せて、と。からかってくる水島くんの二の腕を叩く。
水島くんの変顔だって傑作だったよ、と。言い返せばわたしの頭を両手で撫で回してくる。
嫌がるわたしがいる。喜ぶわたしもいる。
胸がつかえて、どちらに身を委ねればいいのかわからなくて、ただただ目の前で笑う水島くんを瞳に映し続けた。
「な~に~? ふたりとも楽しそうにして~」
にやにやしたみくるちゃんが現れ、思わず背筋が伸びる。
「だ、だって水島くんが変な顔するからっ!」
「先に始めたのは万代じゃろー?」
「わたしのは変顔じゃないもん!」
「知っちょる。頬袋に餌をためたリスの物真似じゃろ?」
違う!! わかってるくせにまたからかって……!