水島くん、好きな人はいますか。

「まあ一部始終を見てたうちらからすれば、ハイハイって感じだけどねー?」

「そうだね。声をかけるタイミングがなかったよ」

「なんかやそれ」


見られてたなんて……。

なにか、よからぬ勘違いをされている気がしてしょうがない。みくるちゃんがずっとにやにやして、わたしばかり見てくる。その顔は、りっちゃんがよくしてるもん。


「ここに瞬がいたら暴れ狂っただろうね」


ハカセの言葉は真実味を帯び過ぎているせいか、ぎくりとした。


「そうだっ……瞬のお守りも買ってくるって約束したんだ! 買ってくるねっ」


返事も待たずに駆けたわたしは、人混みに紛れることでみくるちゃんたちの視線さえ遮断する。


不自然すぎたかも。
逃げたとか、ご機嫌取りの品だと思われても仕方ない。差し詰め今は買いに行ったほうが得策だと思ってるもの。


瞬は体調が悪いって初詣に来なかったけど、それは気分がのらないってことだった。朝に顔だけ見に行ったとき、なんの表情も浮かべていなかった。


瞬の分もお参りしてくる。瞬のお守りも買ってくる。そう伝えたら瞬は『おー』と返事をしただけで、他になにも言わなかった。


“俺が行かないのにお前が行くなんて許されるはずがねえ”とか。

“みくるだけ見てろ。他は視界に入れるな。話すな近付くな”とか。


そのくらいは言ってくるかと覚悟していたのに。
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