水島くん、好きな人はいますか。
……なにかあったのかな。
思い当たるのは、瞬のおじさんとおばさんのことくらい。
訊いたってめったに教えてくれないのが難点だ。なにもなくても、疲れて覇気のない瞬はたまに顔を出すし……どうしたんだろう。
お守り渡すついでに、うちに呼んで一緒にご飯食べようかな。
「――!」
まるで見計らったようなタイミングで瞬から着信が入った。ちらりと青いお守りに目を遣りながら電話に出る。
『いつ帰ってくんだお前』
「もしもしくらい言ってほしい」
『もしもしなんか声変だぞ』
「……失礼な。瞬のほうが変だよ。掠れた声してる」
『二度寝してさっき起きたんだよ。お前んち鍵掛かってて、蹴飛ばそうかと思ったわ。腹減った。餅飽きた』
「瞬、マックなら買ってくるから。あと、うちの家を壊したらお母さんが激怒するから、今後気をつけて」
これください、と授与所の巫女さんにお守りを手渡すあいだ、瞬は微かに笑った気がする。
周りはざわざわとうるさいのに、電話の向こうはとても静かで。瞬が今どんな状態でいるのかと想像しては、気ばかり急く。
やっぱり今日は初詣だけにして、帰ろう。
帰らなきゃ。瞬のことも心配だけど、帰りたい。
これ以上飼い慣らせない感情が、育つ前に。
「瞬。合格祈願のお守り買ったよ。……白いから、汚さないでね」
そうしてわたしは瞬がストッパーの役割を果たしていたことに、初めて気付くんだ。
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