水島くん、好きな人はいますか。


水島くんが眺めるわたしの個人成績表を見遣る。今回受けた仮想模試の総合成績、科目別分析、得点と偏差値の推移、志望校判定などが表やグラフで記載されているもの。


「私学専門の塾に通って、毎月模試も受けて、家でも復習と予習をして、それ以上することがあるのかって」

「まあ、俺も万代は充分やっちょると思うけど……A判定を獲るって目標を達成するために努力するのと、気張りすぎってのは違くなか?」


そう言われて有難かったけれど、首を横に振った。


「瞬は、見てて息が詰まるって。わたし、少し前は息抜きばっかりしてたから、ああわかるなって思ったの」


うまく言えないけれど、A判定を獲ることばかり考えて、逆に頭が固くなってしまっていたように思う。


「自分にプレッシャーをかけすぎだって。やることやってるのにバカみたいって。瞬が言ってくれた意味が、今はちょっとだけわかる気がする」

「……意味?」

「なんていうか……焦りすぎて、手応えも感じないうちに次に進もうとしてるわたしを、瞬は一度止めようとしてくれたのかなって」


早く、速く、と。先を目指すたび、なにかを取りこぼしてしまうようで。見落としているものにすら気付かず、焦りが培ってきたものすら覆い隠してしまうようで。


自分を見失うくらいなら、落ち着こうって。もう少しだけ、自分に自信を持ってあげようって。だから、B判定だったのは喜べないけど、切り替えようって思える。


そんな風に水島くんへ伝えて、苦笑する。

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