水島くん、好きな人はいますか。
「うるさい! やめなよ、恥ずかしいなっ」
そんなふたりに割って入るみくるちゃんって、勇者。
「あーあ。京、大丈夫? 髪すごいことになってるよ」
「んー。どのへん?」
みくるちゃんの手も借り、水島くんは乱れた髪を直す。瞬は舌打ちまでしてから、傍観していたわたしの隣へ来た。
「気に食わねえ」
「……瞬。入学してまだ1週間も経ってないよ? おかげでわたしはすでに疲弊してる」
「俺がやかましいってか? ふざけんな誰のせいだ」
わたしのせいじゃないのに……。
げんなりしかけて、視界に入った人物に背筋を伸ばした。
ひょろりと縦に伸びた背丈。ゆるくパーマがかかった明るめの髪。浅黒い肌。切れ長で奥二重の瞳はどこか淀んでいて、冷たい。
ひらりと健康管理カードを揺らし、気だるそうに歩み寄ってくるその人は。
「次、どこ行けばいいわけ」
シノザキくん、だよね。
見間違うはずがないのに、出逢いが強烈だったから、今でも夢か幻を見ている気分になる。
「知るか。俺はあと聴力検査に行けば終わりだからな」
「うん、俺も。連れてって」
方向音痴なのかな。
「はあ!?」と嫌がるのは瞬で、それはもちろんシノザキくんに対して言っている。