水島くん、好きな人はいますか。
「はあ……」
「うん? どした、万代」
顔を覗き込んできた水島くんにどきり、胸が高鳴る。
「ちょっと疲れただけっ」
きょとんとした水島くんは、人懐こい笑い方をしてみせた。
「あと視力検査で終わりだけん。もうちょっとの辛抱」
な? と笑顔で小首を傾げられたら、頷く他ない。
どきどきする胸が窮屈で、なにかを口走る気もないのに、きゅっと唇を結んだ。
「んじゃ、さくっと終わらせに行きますかーっ」
「俺たぶん視力落ちちょると思う」
歩き出したふたりの歩調にうまく合わせられないわたしは、健康管理カードを見るふりをして赤らむ頬を隠した。
今からこんな状態で、わたし大丈夫かな。
どうして水島くんと同じクラスになっちゃったんだろう。
クラス発表があった日、瞬には散々『よこしまな願い方しやがって!』と怒られた。
願ってはいたけど本当に叶うとは思わないじゃない……。
それにわたしは、瞬ひとりだけ違うクラスになればいいとは願っていなかったんだから、3分の1くらい叶っただけで怒られるのは心外だった。
水島くんとみくるちゃんと同じクラスになれて、嬉しいと思う。瞬とハカセとりっちゃんとクラスが離れて、寂しいと思う。でもこんなクラス分けにしなくても……って思ったのも本当なんだ。