水島くん、好きな人はいますか。
水島くんと同じクラスになってしまったことは、もうどうにできなくて。
彼の性格を知っている瞬は諦めつつも、水島くんに『モテる行為は控えろ』と口をすっぱくして言っている。
それはわたしが水島くんを好きな女の子に睨まれるかもしれないって思っているからで……。
だけどそんな心配は今に始まったことじゃないから、わたしも瞬たちもいつも通りといえばそうなんだ。
ただわたしは、わたしだけが、日常の変化についていけない。
日々行動を共にしていたりっちゃんと離れたと思ったら、初めてクラスメイトになった水島くんとみくるちゃんが、毎朝あたりまえに同じ教室にいて。
長年クラスが遠かった瞬が隣のC組になって、りっちゃんとハカセも隣のE組で、瞬の新しいクラスメイトがシノザキくんだったり。
4月は入学式、実力テスト、対面式、健康診断、部活動見学、その他もろもろ、行事もやることも目白押し。
内部進学が決まったころはあんなに浮き立っていたのに、頭がパンクしそう。
どうしてみんな、ふつうに受け入れられるんだろう。
廊下の大きな窓から差し込む日の光は、あちらこちらから聞こえる生徒の楽しげな声まで照らす。
仰ぎ見た碧空は澄んでいて、白く薄い雲がたなびいていた。
……早くも息抜きがしたい。
ゆらゆら。きらきら。
いつだか望んだ輝かしい世界は、今のわたしにはまだ少し、まぶしすぎる。