水島くん、好きな人はいますか。
「わたしと瞬をひやかしてきたわけじゃないんだね」
「だからなんだよ。お前がイジられてることに変わりはねえだろ。叶がイケメンだからってほだされてんじゃねえよ。マヨネーズごときが調子のんな。溶かすぞ」
いくらなんでも言いすぎだと思う。幼なじみだからってなにを言っても許されると思ったら大間違いだと思う。
水島くんのときと同じだ。
瞬から見てもかっこいいらしい島崎くんは、外見だけでわたしと関わらせたくない人になるんだろう。
わたしが玩具にされ始めたなら、尚のこと。
「俺からもあいつに言っておくけど、なにかされたら俺に言え。すぐ言え」
元から関わる気はないけど。優しいなあ……。
「いいか万代。叶とは、もう関わるな」
差し出された小指。3年前は水島くんだった約束の場所が、島崎くんに変わる。
わたしは結局、約束をやぶってしまったのに。それでも瞬は、約束をしたほうが安心するのかな。
出しかけた手がぴくりと動き、止まる。部屋に響く着信音は瞬のものだ。
「電話、出なくていいの?」
携帯を取り出さない瞬に小首を傾げる。
「いい。腹減ってんだよ」
それはまずい。空腹時の瞬はいつも以上に短気なので腰を上げると、ちょうど着信音も止まった。
「じゃあご飯準備するから、瞬も手伝って」
「ああ、断る」
「お母さんに言いつけてやる」
ぼそっと呟いてから部屋を出ると、いつも以上の怒号を発しながら瞬が追いかけてきて、悲鳴をあげてしまった。