水島くん、好きな人はいますか。
◇
4月も下旬に差し掛かり、徐々に新生活にも慣れてきた。
下校時刻が迫る18時半前、急いで正門へ向かう。
「りっちゃん! ごめん、お待たせっ」
「おー。お疲れ。今日は大学のほうでやってたのか」
写真部のりっちゃんとは家が近いので、時間が合えば一緒に帰っている。活動日ではなかったシーズンスポーツ部の瞬とみくるちゃんはとっくに帰宅しただろう。
「最近どうよ」
正門近くのバス停から乗り込み2人席に座ると、りっちゃんがいつものように訊いてくる。
「どうだろう。この前とあんまり変わってないかな」
「黒王子が怖くて、幼なじみくんが不機嫌ってこと?」
「うん。……黒王子って島崎くんのことだよね?」
「そう。ゴシップ王子に改名しようかと思ってるけど」
「ゴシップって、なんでまた」
「それがさ、すごいんだよー。同級生から上級生おかまいなしに女の子とっかえひっかえで。むしろハーレム? 浮いた話がわんさかっ」
さすがりっちゃん。楽しくて仕方がないのが見て取れる。
「あの外見だし、冷たいのも逆にいい!とか騒がれてるし。まあわかんなくもないね! それに帰国子女枠で入ってきたからねえ」
「えっ。そうなの? 知らなかった」
「万代は疎すぎるんだよ。だから王子って付けてたのに」
だって黒い人とは関わりたくないんだもの……。