水島くん、好きな人はいますか。

「それで? ゴシップ王子には、なにされてるのさ」

「なにってほどでもないんだけど……会うと絶対話しかけてくる。痩せれば?とか、おでこ広いね、とか」

「なーんだ。そういうこと他の女子にも言ってるからね。ちなみに女子の返しは『ひどーい』が鉄板なの」

「嘘でしょう……鋼のような心だね」

「バカだなあ万代は。恋は盲目って言うじゃないか」


恋に落ちても島崎くん相手じゃ3秒で目が覚めるんじゃないだろうか。


「で、幼なじみくんはどうしちゃったわけ? あたしから見た限りでも、かなり機嫌悪いよ」

「んー……会話はするし、ご飯も食べには来てくれるんだけどね。ムスッとしてて、とっつきにくい感じかなあ。触れてほしくないみたい」

「そうかー。じゃあやっぱ親かね?」

「うん、たぶん。そうだと思う」


幼等部から毎朝わたしと瞬と同じバスで通っているりっちゃんは、瞬の両親が仲良くはないことを知っている。


だからお互い、こればっかりはどうしようもないと口にしなくても通じ合えたんだと思う。


できればなにかしたいけど、容易じゃない。


瞬にもし起爆装置がついていたら、スイッチは両親のことだから。粗略に押しでもしたら、傷付くのはきっと瞬だけじゃない。


「りっちゃんは? 最近どう?」

「同じクラスなのをいいことに、メガネくんを観察しまくってますぜ」


げへへとだらしなく笑う彼女の観察眼は鋭くなる一方かもしれない。
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