水島くん、好きな人はいますか。

「――ちょっと!」


「えっ」と漏れた声は自分のもので、それはみくるちゃんがカップを奪い取ったからだった。


「ゴミくらい自分で捨てなさいよ!」

「み、みくるちゃん……! いいから、大丈夫だからっ」


慌てふためき、島崎くんに噛み付く彼女を止める。


「たかがゴミだから!」

「そうだよ! たかがゴミくらい自分で捨てることもできないの!?って話でしょ!」


ああ……みくるちゃんの勇ましさが今はつらい。島崎くんは絶対に黙ってないもん。


「いいね、アンタも」


カップを受け取るそぶりも見せない島崎くんの微笑みは、すぐに溶けて消える。


「でもつまんない。イメージ通りすぎて」

「なんなの? 意味わかんないことばっか言って、」

「叶っ!」


びくっとみくるちゃんの手が揺れる。たかがゴミのせいで瞬の機嫌を損ねるのは避けたかったけど、手遅れだ。


あまりに大股で歩いてくるから1歩後退すると、できた隙間に瞬が入り込む。


「万代に関わんなってあれほど言っただろーが!」

「言われたけど、聞くメリットがない」

「あるっつーの! こんなしょぼい奴に構ってる時間が無駄だろ!」


ひ、ひどいな……。もっとべつな言い方はないのかと思うくらいなのに、島崎くんは無表情だ。


「それは瞬の解釈であって、俺はすごく有意義な時間を過ごしてるんだけど」

「わかった言い方を変える。お前はこの先『なんでマヨネーズごときにあんな無駄なことをしたんだろう』って、自分のガキ臭さに悶えることになるぞ」
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