水島くん、好きな人はいますか。


わたしは彼になにもしていない、ならば。


「マヨネーズってバカにされるわたしに、興味?が、あるということでしょうか」

「興味? さあ、どうだろう。すぐ潰れそうに見えて、なかなか潰れないやつは、嫌いじゃない」


自身の性格を踏まえた上での好みなら、賢いと思う。けれど潰されそうになる本人からすれば、迷惑な趣向だと思う。


「ええっと……つまり島崎くんは、わたしの心が折れるか折れないかを、試しているってことですか」

「島崎って呼んだから教えてやらない」

「……」

「ま、大方把握できたから。もういいや。収穫のひとつくらい、教えてあげる」


やっと瞬の手からカップを取った島崎くんは、ぐしゃりとそれを握り潰す。


「このひしゃげたカップを見て、どう思う?」

「……どうと言われても。捨てるしかない、ですよね」

「俺もそう思う」


にこりと微笑んだ島崎くんに眉を顰める。


「あの、なにひとつ教えてもらえた気が……」


あまりにたおやかな所作だったせいか、彼が腰を折り、左耳に顔を寄せてきたのだと理解できたのは囁かれたあとだった。


「おい待て叶! てめえは一度俺と話し合え!」


瞬は教室に戻る島崎くんを追いかけ、わたしは結局よくわからず仕舞いだけど、みくるちゃんに苦笑いを向けた。
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