水島くん、好きな人はいますか。

「ごめんねみくるちゃん。ありがとう」

「ううん、あたしこそ。逆に事を荒立てたみたいで」

「えっ、そんなことないよ! わたしがはっきり言わないから……みくるちゃんの勇ましさを見習わないとだめだね」


へへ、と情けなく笑う。みくるちゃんは眉を下げながら微笑を浮かべた。


「あたしから見れば万代のほうが勇ましいよ」

「ええ……嘘だあ」

「あはは! ほんとだって! どんだけ自信ないのよー」


軽く体当たりしてきたみくるちゃんに腕を組まれ、そのまま教室まで歩く。


「ねえ万代。さっきのなんだったの? まさかほっぺにキスされたとかじゃないよね?」

「えっ!? されてないよ! 断じてないっ」

「じゃあなんだったの?」

「……、なんだったんだろう?」

「えええ……心配だなぁ。しっかりしてよ万代~っ」


島崎くん相手じゃ、わたしがしっかりしたところで流される気がする。


もう関わってこないでほしい、って正直に言っても通じるとは思えないし、みくるちゃんや瞬に飛び火させたくもないのに……一方的で、まともに応対させてくれない人だから、考えても解決策が用意できない。



『じきにわかるよ』


そう囁いた島崎くんは、なにを知ってるというのだろう。



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