水島くん、好きな人はいますか。

・叶わないのなら、せめて



前期中間テストまで1ヵ月を切った4月末日、久しぶりに5人がそろって勉強会をすることになった。


「京がいないね」


1棟にある図書館の学習スペースに、遅れてやってきたハカセが開口一番に言う。


「お昼からいないんですよ。遅刻までしたのに」

「高等部でもサボり癖は健在か。久しぶりだね、マヨマヨ」


隣に座ったハカセに頷く。


「せっかくお隣りなのに、会わないですもんね」

「僕はけっこう見かけてたよ。水泳部に入ったんだってね。この前、大学のほうにダッシュしてたでしょ」

「ち、遅刻しそうで……」


見られていたなんて恥ずかしい。


「つーかよ。京がいねえと話にならねえ」


眉間を使ってペンのノックボタンを押し続ける瞬が、机に拡げたプリントや教科書を睨んでいる。


「……だよね。京がいるかいないかで、安心感も違う」


みくるちゃんも補正プリントの束にため息をつく。


「京は学力テストもぶっちぎりだったもんね」


筆記用具を出すハカセもふたりに同意した。


みんな、水島くんのことを頼りにしすぎじゃ……。わたしも人のことは言えないんだけども。


勉強を見てほしかったってことよりも、今ここに水島くんがいないってことに、ちょっとがっがり。同じクラスになってようやく、水島くんがいかにサボりの常習犯かがわかったから。


ここ数日だけでも遅刻と授業欠席の連続で、昨日なんて学校自体を休んでいた。


どこでなにしてるんだろう。放課に勉強会しようって、約束したのに。

< 232 / 391 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop