水島くん、好きな人はいますか。
・叶わないのなら、せめて
前期中間テストまで1ヵ月を切った4月末日、久しぶりに5人がそろって勉強会をすることになった。
「京がいないね」
1棟にある図書館の学習スペースに、遅れてやってきたハカセが開口一番に言う。
「お昼からいないんですよ。遅刻までしたのに」
「高等部でもサボり癖は健在か。久しぶりだね、マヨマヨ」
隣に座ったハカセに頷く。
「せっかくお隣りなのに、会わないですもんね」
「僕はけっこう見かけてたよ。水泳部に入ったんだってね。この前、大学のほうにダッシュしてたでしょ」
「ち、遅刻しそうで……」
見られていたなんて恥ずかしい。
「つーかよ。京がいねえと話にならねえ」
眉間を使ってペンのノックボタンを押し続ける瞬が、机に拡げたプリントや教科書を睨んでいる。
「……だよね。京がいるかいないかで、安心感も違う」
みくるちゃんも補正プリントの束にため息をつく。
「京は学力テストもぶっちぎりだったもんね」
筆記用具を出すハカセもふたりに同意した。
みんな、水島くんのことを頼りにしすぎじゃ……。わたしも人のことは言えないんだけども。
勉強を見てほしかったってことよりも、今ここに水島くんがいないってことに、ちょっとがっがり。同じクラスになってようやく、水島くんがいかにサボりの常習犯かがわかったから。
ここ数日だけでも遅刻と授業欠席の連続で、昨日なんて学校自体を休んでいた。
どこでなにしてるんだろう。放課に勉強会しようって、約束したのに。