水島くん、好きな人はいますか。

「飲みもん買ってくるわ」

「瞬。休憩が早すぎると思う。まだ１時間ちょっとしか、」

「うるせえ万代。京が戻ってきたら連絡よこせ」


自分で電話してみればいいじゃない。機嫌悪いなあ……。


財布だけ持って席を離れる瞬を見送り、残ったわたしたちは視線を交わらせる。


「えっと……じゃあ、水島くん探してこようかな」


そろりと腰を上げたわたしを、みくるちゃんが驚いたように見上げてくる。


「電話しても出なかったよ？　そのうち来るでしょ」

「うん。でも、わたしも水島くんがいると助かるし。どこかで寝てるかもしれないから、ひと通り校内見てくるね」


なによりまた閉じ込められる前に探しにいかないと。高等部でも鍵をこっそり拝借する勇気はない。


ポケットに携帯が入ってることを確認し、廊下へ出た。


高等部の校舎は１～３棟まであり、２棟が唯一の４階建てになっている。その屋上にプールがあるのだけれど――。


「あれっ？」


掴んだドアノブをひねっても、感触は施錠されているそれだった。


水島くんが作った合鍵って２棟のものじゃないの？


頭をしぼってから、３棟の屋上へ向かうことにした。


５階まで上り、屋上に続くドアへ手を伸ばす。


開いた。背後に誰もいないことを確認し、わずかな隙間に体を滑り込ませてから静かにドアを閉める。


この瞬間はいつも緊張するけれど、入ってしまえば屋上は落ち着く場所だった。