水島くん、好きな人はいますか。
『水島くんも息抜きになった?』
『なったなった! ほんっと、みんな見ちょるだけで――』連絡を取ってない友達を思い出して、懐かしくなったんでしょう?
『焦ってばっかでかっこわるいけん、俺』立ち止まる暇もないくらい、前だけを見てきたんでしょう?
わたしちゃんと、知ってるよ。
全てを推し量ることはできないけど、気付けるくらい、水島くんの隣にいたんだよ。
「話したくないなら、無理に訊かないけど……」
それでも今、わたしができるなにかを探してしまう。
いつか水島くんの笑顔が見られなくなるんじゃないか……って。根拠もないのに恐れた日のように、“行かないで”って、思ってしまったから。
今の水島くんは一瞬で、沫雪のように消えてしまいそう。
「変えたい運命が、ある」
「……、」
小さな声で言った水島くんの視線は、手元に落ちていた。
「大事な……俺の大事な、やつが……苦しんでて……どうにかしたいって、ずっと、思っちょったけど」
水島くんの手がピアスに伸びる。けれどその輪郭をなぞることなく、ぎゅっと拳が握られた。
「俺じゃどうにもできんかもしれんっ……!」
悲痛な声に胸がつかえても、きっとずっと押し殺していたそれを零した水島くんから、目を逸らす気はなかった。
「なんも言わんと、大事なもん全部置いてきて……それくらいの覚悟で、こっちに来たんに……俺は……っ、」
無力だと、泣いているみたい。