水島くん、好きな人はいますか。
「一緒に願うよ」
「……っ」
ピアスがついた耳たぶに触れると、水島くんの黒目がちの瞳がじわりと潤んだ。
「わたしは願うから、水島くんは誓って」
「……、万代……」
「今より子供だった水島くんと同じように。いつも、水島くんがしてるように……。わたし、よく見てるでしょ」
へへっと頬をゆるませたわたしに、水島くんはぐっと眉を寄せた。
今にも零れそうな涙が落ちたとしても、誰にも言わないよ。
水島くんが耳たぶに触れるときはいつも、願っているってことも。ピアスの輪郭をなぞるときはいつも、誓いを立てているってことも。
誰にも言わない。教えてあげないの。
ピアスに触れるわたしの手に、そっと重なった水島くんの手があたたかくて、涙が出そうになる。
ああ、彼は生きてるんだなあ……なんて。
目の前にいる水島くんに対してそんなことを思うわたしは、胸の奥に巣食う感情にふたをするのをやめていた。
きっと今ならまだ取り返しがつく。
積もるだけの想いを押し込める術を持っている。
でもこの瞬間にそれをしてしまったら、なにも言えなくなる。見て見ぬふりをして、静かに深く沈んでいく水島くんの心を、掬い上げられなくなる。
わたしが一緒に願うことで水島くんの背中を押すことになっても、再び水島くんが夢見る未来に駆け出すきっかけになっても、いいの。