水島くん、好きな人はいますか。

ちょっと意地悪で、それ以上に優しい水島くんの笑顔が好き。わたしに『頼って』と、『大切にしたい』と言ってくれた水島くんのことが……好き。


好きです、水島くん。


だからね、笑っていてほしい。


今、水島くんが悲しくて、つらくて、寂しい思いをしているのなら。立ち止まって、動けなくなってしまっているのなら。今度はわたしが手を引いて、これからもずっと笑い合っていたいの。


わたしはあなたが好きで、水島くんが屋上に出入りする理由を知っている、たったひとりの救助要員だから。



「誓って、水島くん」


わたしの手を握ったまま、水島くんの指先がピアスに触れる。


……わたしは願うから、水島くんは誓って。


『運命なんて俺が変えてみせる』って。


“アヤちゃん”の運命を、変えてみせるんだって。


「何度でも、誓ってみせて」


瞼を閉じて俯いた水島くんの目尻から、つ、と一筋の涙が流れ落ちた。


わたしはつられないように歯を食いしばって、願った。


水島くんの決意のともし火が、消えませんように。


水島くんの待ち望む未来が、早く訪れますように。


願うよ、いくらでも。


だから水島くん。どれだけ困難な道だとしても、それでも歩んできた道を、勇気に変えて。自信に繋げて。


そうしてまた、歩き出せばいいんだよ。

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