水島くん、好きな人はいますか。
「悪いけど、しばらくほっといて。……意味わかるだろ?」
「な、によ京。あたしは……」
言い淀んだ巻き子ちゃんは俯き、水島くんはやむをえないと言った風にため息をついた。
「みくる。教室戻りな。……大丈夫だから、行って」
悲愴な面もちのみくるちゃんは瞳を揺らめかせながらも、その場から立ち去る。
「万代も。教室までついてってあげて」
わたしを通り過ぎたみくるちゃんを目で追う水島くんに、返事はしなかった。
前を歩くみくるちゃんの背中も、さっきの悲愴さも、『ごめん』と謝っているみたいだった。わたしは『謝らなくていいんだよ』とは言えないけれど。
「――っ!」
びくりと動いたみくるちゃんの腕に絡ませた手は、離さずにいた。
「万代……」
みくるちゃんの声は震えていたから、ぎゅっと細い腕を抱いて前を向く。
「……っごめん」
うん……。わかってる。
合わせる顔がなくたって、今はまだ、謝ることしかできなくたって。みくるちゃんが後悔していることも、罪悪感に押し潰されそうになっていることも、わかってるから。
近くにいる。そばにいるよ。
色とりどりの感情を帯びた同級生の目が怖くたって、わたしはこの手の使い道を考え続けるんだ。