水島くん、好きな人はいますか。
清掃時間、「あ」と呟いたわたしのそれはゴミ捨てに来ていた瞬へ発したものだった。
一緒に行くと言っておいてよかった……の、かな。
隣にいるみくるちゃんは一瞬だけ歩みを止め、俯きがちにまた歩き出した。すると瞬が、ひとつのダストボックスをふたりで持っているわたしたちの存在に気付く。
驚いたみたいだけど……話すのかな。わたし、邪魔?
「よお」
瞬はわたしに言ったあと、みくるちゃんへ視線を移す。けれど沈黙が顔を出し、場繋ぎでわたしが「やあ」と返事をした。
「……、じゃあな」
ふいっと顔を逸らした瞬に、緊張でどきどきしていた胸がちくちくと痛み出す。
「捨てるね」
瞬がいなくなると、みくるちゃんはひとりでダストボックスを持ち、ゴミを捨て始める。
わたしがいれば重い空気が少しは和らぐかも、なんて、とんだ思い上がりだ。
笑い合えないふたり。軽口をたたき合えないふたり。まるでもう、他人のよう。
わたしはふたりのそばにいて、役に立っているのかな……。
部活に励む生徒の声が、今日は一段と静かな教室に響く。
帰りのSHRで雨がばらつき始め、机に頬をくっつけるわたしは向かいの校舎で筋トレに励む運動部を眺めていた。
……傘、購買部に売ってたっけ。
窓越しでもはっきりと目視できる雨に目を遣る――と。
「キャーーーッ!」
上階から悲鳴が聞こえたかと思えば、視界のど真ん中を人影が通過した。