水島くん、好きな人はいますか。

わたしは結果が出ると、満足できるときのほうが少ない。もう少し頑張ればよかったって思うことのほうが多い。


瞬は違う? みくるちゃんも、ハカセも、違うのかな?


「あのね……みくるちゃんとハカセと、距離ができたのがわかるんだ。ふたりとも、わたしにも悪いと思ってて……わたしは嫌いになんかなってないのに……。でも、うまく言葉にできなくて、ぎくしゃくしちゃうの」

「……万代が避けないだけ、ふたりは助かっちょるが」


そうかな。瞬と幼なじみであるわたしが近くにいるだけで、罪悪感が増したりするんじゃないのかな。


「クラスの子にね、言われたんだ……。どうしてみくるちゃんといるの?って」

「そぎゃんこと……っ!」


枕にしていた腕に顔をうずめる。


……うん。なにを言われても、無視すればいいよね。


でもわたしは無視したんじゃなくて、なにも言えなかったんだ。どうしてそんなこと言うの?って、答えが怖くて訊き返すこともできなかった。


急に実感しちゃったの。


こうしてだんだんと距離や溝ができていくんだな、って。


悲しくなった。とても、悲しかった。


「どこですれ違っちゃったんだろう」

「……万代」

「前みたいにはもう、戻れないのかな」

「泣くなや、万代」


腕に顔をうずめたままのわたしの右手に、水島くんの手が重なる。


「頼むから、泣かんで……。俺も一緒に考えちゃるけん」


あたたかなそれを拒むように拳を握り、頭を振った。


守りたいものはいくつもあるのに、他の人より小さなわたしの手は、自分の涙しか拭えないのかもしれない。

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