水島くん、好きな人はいますか。




1週間が過ぎてもみくるちゃんは答えを出せずにいて、噂は相変わらず校内に根を張り、枯れるどころか育つのを待っているように見えた。当事者に話を聞こうとする人が減っても、その分監視されているような気がしてならない。


みくるちゃんは日に日に疲弊している様子で、一緒にいても当たり障りのない会話しかできなかった。


どうにかしたいと思うのに、瞬やみくるちゃんを見ていると、そっとしておいてあげたくなる。


わたしは迷ったまま、この立ち位置から動けずにいた。



「もっと他にやるべきことがあるんじゃないかな」

「たとえば?」

「……わからないから悩んでる」

「万代にわからないことがあたしにわかるとお思いかっ」


借りた資料集を返しにりっちゃんのクラスへ来ていたわたしは肩を落とす。


そう言われると思ってたけどさ……。


「ハカセはどう?」

「んー? 見ての通り。ひとりでいるときもあるけど、まあ、メガネくんの友達は野暮なこと言わないから。孤立はしないでしょーよ」

「そっか……よかった」


友達と昼食中のハカセはときおり微笑みを見せていて、ほっと胸を撫で下ろす。


「彼女ちゃんは? どうなの、最近」

「……相変わらず、かな」


ぎこちない笑みを浮かべると、


「キャーーーッ!」


すぐそこで悲鳴があがった。硬質なもの同士がぶつかった音も聞こえ、りっちゃんが「なに!?」と廊下へ顔を出す。


水島くんがまた飛び降りてきたのかと思ったけれど、教室にいたはず。
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