水島くん、好きな人はいますか。
「なに、瞬。やっとお前の口から話してくれんの?」
「言いたいことはそれだけか?」
目を丸くした島崎くんとは対照的に、瞬は面倒くさそうにため息をつく。
「まだあるなら言え。聞いてやるから。殴らない保証はねえけどな」
「……冗談キツイ。俺がここまで正直に言ってやってんのに、聞くだけかよ」
「予想と違ってよかったじゃねえか。喜べ。俺からのコメントが欲しいなら、さすが万代、ってとこだな」
「全く意味がわからない。理解不能」
「安心しろ。今だけだから」
ふん、と鼻で嘲笑った瞬は言う。
「俺はみくるが好きだからな。ダチでもないお前にはわからねえだろうけど、お前が今まで関わってきた女と一緒にすんな」
「……、」
「ついでに、博の良さがわかる奴はあいつを責めたりしてねえってことを、その目で見てきたほうがいいぞ」
すると瞬は顔の向きを変え、巻き子ちゃんたちを睨む。
「お前らも、まだあるなら聞くけど?」
彼らはバツが悪そうに目を伏せた。でも巻き子ちゃんだけが違い、その視線の先を辿れば瞬とわたしの背後だった。
「――えっ、待……っみくるちゃん!」
存在に気付いた途端、みくるちゃんは廊下の先へ走って行ってしまう。だから追いかけた。反射だったかもしれないし、期待したからかもしれない。
廊下に出ると水島くんとハカセの姿もあった気がしたけれど、確認することなく彼女を追った。
わたしたちのうしろにいたってことは、向かい側にいた島崎くんは気付いていたってことになる。ならば、彼の言葉も聞いただろう。瞬の言葉も、きっと届いていた。