水島くん、好きな人はいますか。
誰になにを言われたって瞬はふたりのことが好きだから。
自分の気持ち最優先なのが、瞬らしいよね。大切な人を想って身を引こうとするのは、みくるちゃんらしいね。
あの日わたしが『仲直りしてくれる?』って言ってなかったら、あそこでわたしたちの関係は終わっていたかもしれないよね。
「万代……ごめんね、ほんとに、ごめん……っ」
「……謝らなくていいよ」
初めて言ったその言葉に、みくるちゃんが顔を上げた。
熱を帯びて赤くなった下まぶたや、うずたかく滲んだ涙をこらえようとする姿は、否応なく心の表面をすり切る。
「……わたしなにも言わなかったけど、ハカセとしたことにも、みくるちゃんが決めたことにも、怒ってないよ」
「怒っていいんだよ……っ! だって、万代はあんなに必死に励ましてくれたじゃんっ。心配して、最近どう?って訊いてくれたのに……しょうもない嫉妬ばっかする自分が、恥ずかしくて……見栄張って、相談っ、できなくて」
堪え切れない涙と一緒にみくるちゃんが零すのは、多くの後悔。そんな彼女にわたしもまた、後悔を感じていた。
「……相談してほしかったよ」
身勝手だと思う。それでも言ってしまおうと決めた。
「何回でも励ましたよ……っ! みくるちゃんが不安なら、何回も、何十回でも、大丈夫だよって!」
相談してもらえなかったことが寂しい。
本音を言ってくれたのが今日になったことが悲しい。
だけどなにより……悔しいんだ。