水島くん、好きな人はいますか。
『お名前はー? 同じ学校の子?』
「……同じクラスで、織笠万代といいます」
『俺はねー、リツ。法律の律。マヨは? あ、待った当てちゃる! んー……ヨロズに世界のセ?』
「惜しいです。代金のダイです」
『そっちね。永遠って意味か。なのにたとえが代金って』
吹き出したお兄さんの声は水島くんと似ていると思った。
『つーかさっきから水の音?するんじゃけど。声も反響しちょる』
「それは室内プールにいるからかと……」
『は!? 京のやつ水泳部入ったんかや!? アイツ帰宅部って言うちょったがっ』
「いえあの、帰宅部です。今日は、というか今は期末テスト前でどの部活も休みなんですけど……水島くんが泳ぎたいと言うので、水泳部のわたしがちょっと、」
息抜きにひとりで自主練習したいと顧問をだましてすいません……。一滴だって濡れてやしないジャージ姿の自分に落胆していると、
『京の様子、変?』
お兄さんは訊いてきた。
『アイツが泳ぎちょーって言い出すんは遊びたい気持ちが大半じゃろうけど、スカッとしたいって気持ちが入っちょる場合もあるからなー』
「……」
『しんどいんなら頼ればよかと思わん? あれで隠しちょるつもりか知らんが、根が正直だけん、隠し通すんは高確率で無理』
「……昔からそうなんですか」
『あー。やっぱ心開いてない感じ? まだ転校生ポジション? 優しいけど壁作られちゃってる感じ?』