水島くん、好きな人はいますか。

「え、や、そんなことないですよ。むしろ壁を作ってたのはわたしのほうで……意味なかったんですけど……あ、意義はあったんですけど、ええっと」

『つまりアイツにはちゃんと友達がいる、と』

「……いないと思ってました?」


――ぱしゃん。プールの水が跳ねた先で、水島くんが濡れた髪を掻き上げていた。


『アイツ詳しいことは話してくれんから』


数秒の沈黙のあと、お兄さんは突き放すように言った。


『友達? できた。部活? 入っちょらん。テスト? 2位だった。そっちの生活どう? 人と建物と路線が多い。単調な答えばっかで、こっちには用事ついでに元気?ってしか訊かん』

「心配を、かけたくないのかも……」

『心配ねー。知っちょる? 京、住所と連絡先は家族にしか教えんで、友達にはなにも言わず転校したって』

「はい……知ってます」

『……、それは意外じゃった。なら余計に、万代がこっちの京の友達と同じ状況になったら、心配かけたくないのかもって思えるかや』


それよりもなんだかちょっと、言葉に棘があるのは気のせいだと思いたい。


直接、水島くんと話したほうがいいんじゃ……。あ、話してくれないからわたしを相手にしてるのか。


『思えんじゃろ?』


黙ってしまったわたしに再び問いかけるほど、お兄さんはなにを聞きたいんだろう。
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