水島くん、好きな人はいますか。

『……そぎゃんこと言う友達がおるんか』

「いますよ、他にも。秀才なのに堂々とサボる水島くんのこと、効率悪いって。もっとうまくやればいいのに、疲れないのかなって言ってた子も。水島くんは人に頼るのが、苦手なんですね」


ふふ、と自分が笑ったことで気付いてしまった。


わたし……対抗してる。


水島くんの様子を話せるだけ話そうとしていたはずが、わたしたちは水島くんと上辺だけの友達じゃないんだって、そう思ってもらいたくなってる。


「お兄さんは意外かもしれませんけど、わたし、いろんなこと知ってます。全部じゃないけど、水島くんのこと。転校してきたころから水島くんと一緒にいる、友達のこと」


なんて、不純。勝ち負けなんてあるはずないのに、向こうの友達にだって負けたくないとまで思ってる。


恥ずかしくて顔が赤くなってくる。それでも止まらなかった口にいっそうみじめな気持ちにされても、心のどこかで嘘はついていないと誇るわたしがいる。


全部本当のことを話したのに、勝てっこないって泣きそうなわたしもいる。


記憶に居座る女の子が、どうしたって消えないまま。



『……京のこと、好きかや?』


じわりと涙が滲んだわけを、今はまだ、定かにしたくなかった。


「好きですよ……。わたしも、みんな、水島くんのこと」


だからもう、なにも話したくない。

お兄さんや向こうの友達の存在を感じたくない。


話すたび、感じるたび、水島くんと離れ離れになってしまうわたしを想像しては、胸がやぶけてしまいそうで。

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