水島くん、好きな人はいますか。

「どうしたの? 泳がないの?」

「伝わるかと思った」

「え……あ、うん。伝わった、かも」

「かもしれないじゃだめー」


プールからあがった水島くんは、右側に腰掛ける。


来たときより暗くなったプールは、蒼い月夜の雰囲気をいっそう強めている。


わたしはまた、密かにどきどきしていた。直視しなくても、水島くんの視線って心臓に悪い。


「見すぎだと思います」

「伝わった?」

「……間違ってたら恥ずかしいです」

「間違っちょらん」


言い切るなあ……。だからこそ、そうかな?って思わされてしまうのが悔しかったりもする。


「ありがとう、って……伝えて、くれた」

「当たり」


ありがとーな、万代。

いつかと同じように水島くんは言うから、嬉しくもあり、悲しくもある。


せっかく当たったのに、以心伝心だったのに、わたしはそれ以上の言葉はもらえないんだ。


「元気になってもらえたなら、よかったです」


どきどきする胸は、ちくちくとした痛みも孕んでいる。


「俺、確かに滅入っちょるって言ったけど、まだ落ち込んどるように見えちょーなんて思わんかったが」


それは水島くんが案外わかりやすいからだよ、っていう答えを準備して、本当はわたしの目が特別製だからだよ、って答えを隠している。


「でもわたし、水島くんがどうして落ち込んでるかまでは、なんとなくしかわからないよ」

「んー……万代はもう平気になったかや」

「どうだろう。瞬とみくるちゃんが別れたことは頭ではわかってるけど、流れには乗りきれてないっていうか」
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