水島くん、好きな人はいますか。
「取り残されちょる感じ?」
「ああ、うん……そんな感じ」
順応するには、もう少し時間がかかりそうなんだ。
「水島くんは同じようで、ちょっと違う気がする」
わたしはプールに浸けた足をゆっくり動かしているけど、水島くんは動かさないように。
「俺は、終わりを見るんがつらい」
そうこぼした水島くんの声は沈んでいるように感じた。
「今まで何度か見てきたけど、瞬とみくるがそうなるとは思っちょらんかったし……相手がハカセだってことも、最初は信じられんかった」
「……許せない?」
「俺が許す許せないを言うのは違う気がする。人がいつ誰を好きになるかなんてわからんし……。心変わりだって、気付いたときにはどうしようもないんじゃろうなーって思う」
「……」
「でも、だからこそ俺は、魔が差したわけじゃないといいって思うけん。ただの出来心だったら、やるせないっちゅーか……うまく言えんけど」
口の端をゆるめた水島くんに「そっかあ」と微笑み返す。
どちらも覇気のない、場繋ぎのものでしかなかった。
「水島くんは、一途なんだね」
終わりを見るのがつらいと言う水島くんへ実際にかけたかった言葉は、虚しくも島崎くんと似たようなものだった。
ひとつの恋を終わらせたことのあるわたしは、多少なりとも慣れてしまったのかもしれない。