水島くん、好きな人はいますか。
誰かと繋いでも、それが絶対に断ち切れない縁の糸とは限らない。全てをわかり合えるわけがないし、互いの想いがずっと変わらず同じなんて保障はどこにもない。
頭ではわかっているのに悲しいと、つらいと感じてしまうのは、たしかに幸せの中にいたからなんだと思う。
いつまでも終わらないでほしいって感じる一瞬が、日々あったからなんだと思う。
5人で、息抜きにゲームセンターではしゃいだ日。
内部進学を祝った、中庭に6人の笑い声が響いた日。
今のわたしにとって思い出になってしまった日々はもう、夢幻と同じになってしまった。
それを仕方ないと思えないのが、ひとつの幸せが続くようにと願ってしまうのが、水島くんなのかもしれない。
……水島くんは一途すぎて、いつかその想いに押し潰されてしまいそう。
「そんなのいやだ」
項垂れるわたしは体重を前に移動させ、そのままプールへ体を投げた。
ジャージが水を吸い込んでいくのがわかる。重くて脱ぎ捨てたいくらいなのに、裾という裾がクラゲみたいに軽やかになびいているのがわかる。
こぽ、と。目を開けた先で小さな気泡がのぼっていく。ゆらめく水面の向こうで、水島くんがこちらを覗き込んでいた。どんな表情をしていたのかは拾えない。
わたしは体を反転させてプールの底を泳ぎ続けた。
息が、続かなくなるまで。涙が、涙でなくなるまで。