水島くん、好きな人はいますか。
――ぷはっ、と顔を出すと水島くんは続いて来ていたようで、割と近くにいた。
「急にどうしたがっ! 入らんって言っちょったんにっ」
「今さら入りたくなるとはわたしも予想外だった」
真面目な顔で言えば、水島くんは「なんかやそれ」と屈託なく笑った。
「もう俺ら完璧に濡れちょーね」
「シャワールームもドライヤーもあるし大丈夫だよ。ジャージを持って帰らなくちゃいけないのが面倒だけど……」
「これ見つかったらどうなるかや」
「見つからなきゃ平気でしょう?」
「万代も悪くなったなー」
「……水島くんのせいだ」
「ははっ! ……いいことだ」
わたしの真似をしたのか、きりっとした顔で言った水島くんに、両手で作った水鉄砲で攻撃しておいた。
「この……っ万代ぉ!」
「うわっ、あはは!」
片腕全体を使って水をかけられたわたしの笑い声が、水の音と一緒に室内プールに響く。
仕返しをして、反撃されて、そのたびに笑う。
笑ったぶんだけ涙をこらえるのに、彼の瞳に映るたび、彼の声が届くたび、張り裂けそうなくらい胸がいっぱいになった。
――ねえ、水島くん。
終わりを見るのがつらいって。心変わりが出来心だったらやるせないって。落ち込んで、元気がなかったのは……自分も同じことになるかもしれない、って考えてしまったから?
それとも、とっくにそんな状況になってる?