水島くん、好きな人はいますか。
ばらすなんてつまらないことはしないって言ったくせに。平手打ちの代償だとしたら、なんて効果的なんだろう。
ああもう本当にどうしよう。考えたところで閉じこもってもいられず、ルームウェアに着替えて部屋を出た。
「ご飯作るから手伝って」
案に違わず廊下で待っていた瞬に言えば眉を顰められる。
「この前手伝った俺を3分で追い払ったのはどこの誰だ」
3分じゃない。『瞬に手伝わせたらご飯が炭になる』って思ったのは5分経ってからだった。言わないけど。椀によそうくらいならできるでしょ、とも言わないけど。
「まず俺の話を聞け」
対面式のキッチンに入ると、瞬はダイニングテーブルの椅子に座った。
「好きなやつがいるって?」
もうそれしか頭にないんだろうな……。
「いったいどうしてそんな話になるの」
「急なんかじゃねえぞ。これでも待ってやったんだ」
瞬が待つ? 今日知ったんじゃないの?
冷蔵庫をあさっていたわたしは振り向きかけたが、猶予期間か、と思いとどまった。
「まず、俺には隠して叶には話してたのが気に入らねえ」
やっぱり島崎くんか……。からかわれたんじゃないの?って言ったところで信じてくれるかどうか。
「まあ薄々気付いてたけど。人前で言うなんて、アイツよっぽどむかついたんだろうな」
「……、え?」
「は?」包丁を持ったわたしを瞬は訝しむ。