水島くん、好きな人はいますか。
「過保護は卒業すんだよ。嬉しいだろ?」
「……今さら?」
「今だからだろ。自分が思ってるよりずっとしっかりしてんよ、お前。うじうじはすっけど、折れる心配もねーし」
「ええ……?」
「疑ってんじゃねえぞ。俺はここ最近のことで思い知らされたっつーか、万代がいちばん最強くせえって思ったんだよ。叶に負けねえなら、大概のことには負けねえだろ」
確かに島崎くん以上の人は想像できないけれど。あの人、斜に構えてるだけで実はそんなに怖くないんじゃないかと思っていたりもする。
「俺が鍛えてやったおかげだな」
「……結局自分の手柄にしちゃうあたり、瞬って抜け目ないよね」
――あ。笑った。自分でも認めつつ、当てられて嬉しそうな、わたしでもくすぐったくなる笑顔。
でも……そっか。瞬はもう反対しないし、怒ってもくれないのか。
「実は瞬って、ストッパーの役割を果たしてたんだよ」
「意味なかったじゃねえか。俺があんだけ妨害してやったのに、好きになりやがって。お前はいつから俺に無断でことを運ぶようになったんだ」
あえて断定するなら、水島くんが飛び降りてきたときから。
そのあとも瞬の知らないことがいろいろ起こっているけど、それを思い出したらふふっと笑ってしまった。
「内緒」
得意げなときの瞬を真似してにやにやすれば、「調子のんな」と一蹴された。だけど目を伏せる瞬はおかしそうに頬をゆるめていたから、胸があたたかくなった。