水島くん、好きな人はいますか。
「~っもう! すいません、少し待ってもらえますかっ」
解凍したうどんを電子レンジから取り出していた店員が頷くのを確認してから、小走りで飲料コーナーに向かう。
「近いんだから自分で買いにきてよーっ」
『今コンビニにいるお前が買ってこいよ』
「はあ……。何本? 3本買えばいいよね」
『おー。金返すから、うちに持ってこい。よろしくー』
言うだけ言って電話を切った瞬は、わたしと同じように勉強をしていて、休憩に入ったんだろう。
レジに戻り、夕食のおでんと瞬の炭酸飲料、それからチョコレートバーを2本買ってコンビニを出た。
瞬とは11年以上の付き合いになる。
わたしが4歳になったばかりの頃、瞬が隣に越してきた。
アルバムを見ればずっと一緒に遊んでいたことがわかる。お互い10歳になった頃から、写真が少なくなっていることも。
それは瞬の両親が不仲になって、交流がぎくしゃくしたせい。
今も仲がいいとは言えないけど、わたしの両親のように離婚する気配はないらしい。
わたしのお父さんが家を出て行ったのは、小学1年生になったばかりの春だった。
お父さんのことは、怖かったな、という印象ばかりが先行して、見目形はうろ覚えになってしまった。