水島くん、好きな人はいますか。
そんな自分が今も、これからも許せないと思った。
ハカセは微笑を浮かべながら、聡明な瞳を上げる。その中には否定を許さぬものが含まれているようにも見えた。
「だから、もう一度頑張ることにしたってことですか」
「うん。単純にやりたいと思ったことはやろうかなって」
それは難しそうだな……。
簡単なことのほうが、少ないのかもしれないけど。
ハカセはこれからどう進むか、決めたんだね。
瞬も水島くんもそんな風に、たくさん考えて決めたのかな。
「わたしにできることがあったら、言ってくださいね」
「じゃあひとつ、頼んでもいいかな」
思いのほか早く頼みごとをされて目をしばたたく。
テーブルに置かれたのは、ハカセが準備したみくるちゃんへの誕生日プレゼントだった。
「みくるに渡してくれる?」
「え。わたしが? でも自分で渡したいんじゃ……」
「直接渡すより、効果あると思うんだよね」
「……、了解しました」
「今、やり方がずる賢いって思ったでしょ」
「思ってません! 思ってませんよっ!?」
必死に主張すれば、ハカセは「だって間があったよ」とわざとらしく哀愁を帯びた吐息をもらした。
間があったのは、感心してしまったから。
わたしはね……考えても考えても、自分がどこへ向かえばいいのか、わからないの。