水島くん、好きな人はいますか。
わたしも手伝うことを名目に夢ではないと確認することにしたんだから、瞬の気持ちがわからないわけじゃない。
この目で見なきゃ信じられない。
そう思っていたけど、瞬の部屋で、瞬の荷物を段ボールに詰めていても、現実味はなかった。
「万代。これとー……これもいらねえ。やる」
もう着なくなったのか、小さくなったのか。派手なワッペンがついた白いパーカーと、英字プリントがほどこされたネイビーブルーのトレーナーが差し出される。
「ありがとう……」
「これも」
「ありがとう」
「アホ。それはゴミだ」
ほんとだ。でも香水は少し残ってるし、もらっておこう。
こんな調子で、瞬が『やる』と言ったものは全て受け取っていた。たとえ瞬にとって不要と判断されたゴミでも。
注がれていた、淡く見通す視線が消えるのを感じ、片付けに戻った瞬の背中をそろりとうかがう。
開け放たれたクローゼットの前で、いくつもの段ボールと服の山に囲まれる瞬は、分別が早い。今日中に小物類や秋冬の洋服は詰め終わりそうだ。
「……本当にいなくなっちゃうんだね」
「勝手に俺の存在を消すな。日本にはいるっつーの」
それでも悲しい。
引き止める力を持っていない自分に、なにもかも受け入れた風な瞬に、たまらなく悲しくなる。