水島くん、好きな人はいますか。
「なんか深夜までバイトしてたらしくて、うち名目上はバイト禁止じゃん? それでいくら成績優秀の京くんでも、他の生徒に示しつかないからとかって。生活態度もいいわけではないじゃん」
「あ~……京くんって遅刻もサボりも多いもんねぇ」
「1週間の自宅謹慎だって。ついさっき掲示板に張り出されてさあ。もうみんな騒然!」
「え、で、なんのバイトしてたの?」
「それがよくわかんなくて。みくるたち知らない?」
「や、あたしは知らないってか、京がバイトしてるなんて聞いたことない、よね? ……えっ、万代!?」
教室から飛び出したわたしは「どこ行くの!?」と叫ぶみくるちゃんに返事することなく下駄箱を目指すはずだった。
肩が誰かに当たり、顔を上げれば島崎くんだった。
「ごめんなさいっ」
「ちょっと、」
「なんですかっ!?」
急いでいるせいか、手首を掴まれたことに苛立った。
「水島どこ行ったの。帰った?」
「知りませんよ! なにか用なら自分で探して……っ、」
ぎゅっと強く手首を掴む力が、うるさいと言っている。
「声張るのやめてくれる。……で、聞いた? 水島が停学になったこと」
なんなの……わたし今、本当に急いでるのに!
「今さっき聞きましたけどっ」
「なら話は早い。水島の――」
「その手を離しやがれクソ叶!」
今度はすでに怒りメーターを振り切っている瞬が現れ、いよいよわたしの苛立ちも最高潮になり始めた。