水島くん、好きな人はいますか。
「万代から離れろ! 俺がいねえときに万代に近づくんじゃねえってあれほど言っただろうが!」
「わかったなんて言った覚えはないけど」
「だいたいお前だって呼び出されたくせに、なんで京だけ停学になってんだよっ」
「あーもー……ほんっとやかましいな」
島崎くんと同じようなことを言おうとしたわたしの苛立ちが、怖いほど静かに沈んでいった。
「どういうこと?」
睨み合っていたふたりが、視線をよこす。
「だから、水島の住所かアドレス」
「黙れ叶。こいつが元凶だ。悪いのはこいつで大決定なんだよ」
「ちょっと。なにを根拠に言ってるわけ?」
「はあ? 超攻撃型で人の傷口に塩塗るの大好きなお前が、他人に罪なすりつけんのなんか造作もねえだろって俺に思わせた時点で根拠になんだよ」
「むちゃくちゃ言わないでくれる」
呆れ返る島崎くんに悩まされたことは山ほどあれど、ひとつだけたしかなのは、彼は嘘をつかないということ。
常に正直だ。嫌悪感を抱かれようと、誰を傷付けようと。
「罪なんか、なすりつけてないんだけど」
「じゃあ他にどんな手を使いやがったんだよ」
気が逸れているうちに、島崎くんの手を振り払う。
「あ!? どこ行く気だ万代!」
予鈴が鳴り響く最中、再び下駄箱を目指して腕を振った。