水島くん、好きな人はいますか。
あれ? 怒ってないのかな……。
訝しく思いながらも瞬の部屋に通され、さっきのメールは誰からだろうと携帯を取り出す。
「うお」と瞬が声を上げる。
見れば、炭酸飲料とチョコレートバーが入っている袋を覗いていた瞬が、満足げな笑みを向けてくる。
「さすが万代」
「……、お腹空いた」
「あっため直したほうがよくね? ちょっと待ってろ」
べつにいいのにな、と思いながらテーブルの前に腰掛けてメールを確認する。
水島くん……っ!?
≪今日はありがと。≫
という始まりに他愛のない話題が加えられており、驚きや焦りや戸惑いが一緒くたになってせめぎ合う。
最終的に残ったのは、水島くんに対するあたたかな気持ちだった。
世の中にはつり合わないという表現があるのに……。
水島くんは等しい目線でわたしを見てくれているのかな。
「思ってた通りの、子……」
ぽつりと零れたのは、水島くんに言われたわたしの姿。
……口にされた素敵な言葉を、形に残せることができたらいいのに。そしたら宝物にして毎日眺めるのに。
誰に自慢するわけでもないけれど、胸の奥にしまっていると他の感情でだんだんと汚れていってしまいそうだから。
言われて気付く、嬉しい言の葉種。
形にすることはできない代わりに幾度も思い返しては、そっと心のすみっこに添えた。
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