水島くん、好きな人はいますか。
・本当に待ち遠しいのは
明日の天気予報にも、朝から晩まで傘のマークがついていた。梅雨なんだから仕方がないけれど、夏が待ち遠しくなるような気持ちはまだ、欲しくなかった。
「しゅーんー」
部屋に入ると瞬はテレビゲームをしていた。
また片付けほっぽって……。
「瞬、ご飯」
「おー。ちょっと待て」
「ここ置いとくからね。冷めても知らないからね」
「だからちょっと待てっつーに」
瞬の待ては最低でも20分くらいでしょうに。
ローテーブルに、わかめとじゃがいもと豆腐の味噌汁、親子丼とサラダが並んだ盆を置く。
わたしは部活が休みの日は先に済ませるから、瞬が部活の日はこうして夕飯を運びに来ている。
「――あ!? てめえ、なにつまみ食いしやがった!」
思いのほか早くゲームをやめた瞬は、もぐもぐと口を動かしていたわたしに眉を吊り上げた。
つまんでいたプチトマトのへたを見せる。
「……肉じゃねえならいい。許す」
最初からつまむ気で1個多くのせていただけなのに。
瞬は箸を持って親子丼を豪快にかき込む。わたしは段ボールが散乱した部屋を見回す。
「けっこう片付いた?」
「だいたいな。もうしばらく使うもん以外は詰めた」
「ゲーム機とソフトは見事に残ってるね」
「それが、片付けてたら懐かしのソフトが出てきて。うっかりハマってやったわ」
「ふふっ。なにそれ」
言い方に笑えば、みそ汁に口をつける瞬も頬をゆるめた。