水島くん、好きな人はいますか。

離れたくないよ。


まだ教室で、屋上で、他愛ない話をしたい。せめて卒業まで同じ制服を着て、笑い合っていたかった。


だってね、ひとつひとつ思い返すたび、未来を想像するたび、胸があたたかくなる水島くんの姿は、いつも同じなの。


きっといちばん心地いい関係は、もう結べていたの。


やっぱり今でもわたしは、水島くんの救助要員なんだなあ……って、おかしくなっちゃうくらい。


この胸に芽生えた想いは消えそうにないけど、想いがあるから、最後の最後まで、笑っていてほしいって思うんだ。


水島くんの、苦しそうで、切なげな表情を何度も見た。


ここではないどこかへ想いを馳せて、懐かしむ君がいた。わたしたちといて勉強になったと、なにかを学んだ君もいた。


それなのに……また、同じことを繰り返すのなら。


繰り返さないでほしいって、強く思ったよ。


水島くん。

わたしたちになにも言わず去っていった先で、ひたむきに夢だけを追いかけられる? 救いたい人だけを想って、日々を過ごせる? 黙って関係を切ったわたしたちの存在は、本当に少しも、枷にならない?


「――万代」


教えて。わたしも瞬も、みくるちゃんもハカセも、大事な友達なんだって、水島くんの言葉で、思わせてほしい。


「俺、な……」


うん。

お願いだから……なにも、残していかないで。

ここに、後ろ髪を引かれるような想いは、ひとつも残していかないで。背中を押されたって事実だけを、残して。


「転校するけん」


ぽろりと落ちた涙を、止めようとは思わなかった。
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